暗闇の中での跳躍

物 議 を 醸 せ

レイヤー構造を理解できない脳のバグ

恋愛リアリティーショーに出演されていた方が自死された問題が話題となっています。

自死に至った背景のひとつとして取り沙汰されているのが、SNS上における誹謗中傷です。

果たして誹謗中傷が本当の原因なのか、他にあったのか、真の因果関係は藪の中です。

私がこのエピソードを知った時、「人間のバグがまたしても出たな」と思いました。

今日はそのバグについて書きます。

 

端的に言うと、ここでいうバグとは「人間のレイヤー構造を理解できないこと」です。

レイヤー構造とは事象同士の重なりを意味します。

すなわち、人間が元来持っている多層的な側面を別個の事象として捉えられず、観測した(さらに強調された)一側面をもって相手の全てだと考えてしまう、という認識のおかしさが、ここでいうバグです。

 

誹謗中傷の原因は、ショーの中での行動によるものであったと聞きます。

加害者は「ショーのなかでの役割」と「本来の人間性」を同一視しており、そのレイヤー構造を理解していません。

討論の場でも同様のことが起こります。

「討論者としての批判的意見」と「本来の人間性」を同一視して、討論は終わったにも関わらずあれを言われたこれを言われたと陰口を叩く人間はいます。

偉人伝でも同様のことが起こります。

「業績」と「本来の人間性」を同一視して、善行を行った人間はおしなべて善性であり、悪行を行った人間はおしなべて悪性であると断じます。

 

悪役(ヒール)でも好きな人に微笑むし、討論中の意見は相手を貶すものではないし、キング牧師だって性犯罪に加担した疑惑があり、ヒトラーは道路網を整備したし、ファーブルも煩いからと鳥を撃ち殺しています。

 

「本来の人間性」という軸だけで考えても、この世界の人間は、あまりにも物事を一側面から断じすぎていると思います。

これを「国民の生活環境」等とおけば、国のコロナ対策を批判する多くの意見は完封できるでしょう。

多層性を理解せず、レイヤー構造を理解せず、一側面だけで物事を断ずる姿勢は本当に愚かです。

 

今こそJ.S.ミルの自由論、オルデガの大衆の反逆といった古典を読むべきなのかもしれません。

自分の意見は完璧ではなく、真に正しいことを言うのならば、自分の意見と同じくらいに相手の意見のことを知らねばいけないのです。